COLUMN
タバコの歴史を図解|パイプ・キセルから紙巻き、VAPE、加熱式までの進化をわかりやすく
火皿に葉を詰めて吸うパイプやキセルから、1本ずつ紙で巻いた紙巻きたばこへ。そして今は、火を使わないVAPE(電子たばこ)や加熱式たばこへ——。たばこの吸い方は、数百年のあいだに大きく姿を変えてきました。
この記事では、その移り変わりを時代順にたどります。まずは年表で全体をつかみ、そのあと時代ごとに「何が変わったのか」「なぜ変わったのか」を、イラストと図解で見ていきます。
ニコチンには依存性があります。20歳未満の方、妊娠中・授乳中の方はご使用になれません。
ひと目でわかる、たばこの進化の年表(広まった時期の順)
- 数千年前〜アメリカ大陸で生まれる先住民がパイプや葉で巻いたたばこを使っていた
- 16世紀〜ヨーロッパでパイプが流行大航海時代に世界へ。白い粘土のパイプが広まる
- 17世紀〜日本でキセルが発達細く刻んだ葉をひとつまみ詰めて吸う、江戸の喫煙文化
- 1880年代〜紙巻きたばこが主流に製造機の登場で、1本ずつの紙巻きが大量に出回る
- 2004年〜VAPE(電子たばこ)が登場たばこ葉を使わず、液体を温めて蒸気を吸う。2000年代後半に欧米へ
- 2014年〜加熱式たばこが広まるたばこ葉を燃やさずに温める。日本から広まった
大きな流れで見ると、変化は2回あります。1回目は「道具に葉を詰める」から「紙で巻いた1本」へ。2回目は「燃やす」から「温める」へ。この2つを押さえておくと、あとの話がすっと入ってきます。
はじまりはアメリカ大陸 ― 数千年前から続く習慣
たばこは、もともとアメリカ大陸に自生していた植物です。先住民は数千年前から、葉をパイプに詰めたり、葉で巻いたりして煙を吸っていました。儀式や祈り、客をもてなす場面など、暮らしの中で特別な意味を持っていたとされます。
どこまでさかのぼれるのかは、今も研究が進んでいます。2021年に発表された研究では、米国ユタ州の遺跡から約12,300年前のたばこの種子が見つかり、それまで最古とされていた約3,000年前のパイプの痕跡を大きく更新しました。
この習慣がアメリカ大陸の外に出るきっかけは、1492年です。コロンブスの一行は現地で乾燥したたばこの葉を贈られ、キューバでは人々が煙を吸う姿を目にしました。
- 時期
- 数千年前〜15世紀
- 吸い方
- パイプに詰める、葉で巻く、噛む など
- 転機
- 1492年、コロンブスの一行がたばこに出会う
大航海時代にヨーロッパへ ― パイプと嗅ぎたばこの流行
ヨーロッパに持ち込まれたたばこは、はじめは珍しい植物、あるいは薬になると考えられていました。1560年ごろ、ポルトガル駐在のフランス大使ジャン・ニコが、たばこを王妃カトリーヌ・ド・メディシスに頭痛の薬として送った話は有名です。「ニコチン」という言葉は、このニコの名前に由来します(物質としてのニコチンが取り出されたのは1828年です)。
吸う習慣として広まったのはパイプでした。イギリスには1565年ごろに伝わったとされ、1580年代には探検家ウォルター・ローリーらが宮廷で流行させます。16世紀末からは、安く作れる白い粘土のパイプ(クレイパイプ)が大量に出回り、庶民にも広がりました。
一方で、反発もありました。1604年にはイングランド王ジェームズ1世が、たばこを批判する小冊子『たばこ排撃論』を出しています。
18世紀になると、フランスの宮廷を中心に、粉にしたたばこを鼻から吸う嗅ぎたばこが上流階級の流行になりました。凝った細工の小箱(スナッフボックス)を持ち歩くのが、たしなみのひとつだったのです。
日本ではキセルが発達した ― 江戸の喫煙文化
日本にたばこが伝わったのは、16世紀後半〜17世紀初めとされます。ポルトガルやスペインとの南蛮貿易を通じてもたらされ、「タバコ」という言葉もポルトガル語の tabaco から来ています。確かな記録としては、1601年にスペインの宣教師が徳川家康へたばこの種を献上した話が残っています。
たばこはあっという間に広まり、江戸幕府は1609年から何度も禁令や栽培の禁止を出しました。しかし守られることはなく、元禄年間(1688〜1704年)ごろには、新たな禁令も出なくなります。
そうして根づいたのがキセル(煙管)です。語源はカンボジアの言葉(クメール語)で管を意味する「クセル」とする説が有力とされています。
図解:キセルの3つの部位
- 雁首
- 先に小さな火皿がついた金属の部分。ここに葉を詰めて火をつける
- 羅宇
- 煙の通り道になる竹の管。ラオス産の竹を使ったことが名前の由来とされる
- 吸口
- 口をつける金属の部分。雁首と羅宇、吸口は取り外して掃除や交換ができた
キセルの特徴は、火皿がとても小さいことです。そこに詰めるのは、髪の毛ほどの細さに刻んだ「刻みたばこ」をひとつまみ(現在の製品で刻み幅は約0.1mm)。すぐに吸い終わるので、灰を落としては詰め直し、を繰り返します。
家では煙草盆(たばこぼん)と呼ばれる箱に、火種を入れる「火入れ」と灰を落とす竹筒「灰吹き」をそろえて使いました。キセルの装飾やたばこ入れは、おしゃれを競う道具にもなり、浮世絵にもたびたび描かれています。
紙巻きたばこの時代 ― 機械化で「1本ずつ」が当たり前に
紙で葉を巻いて吸う方法の起源は、16世紀のスペイン・セビリアで、葉巻の吸い殻を拾って紙で巻き直したことだと言われています。これが18世紀末にかけて広まり、「シガレット(小さな葉巻)」という名前がつきました。
ヨーロッパで一気に広まったのは、クリミア戦争(1853〜1856年)のころです。戦地でトルコやロシアの兵士が吸う紙巻きをイギリス兵がまね、帰国後に持ち帰りました。道具がいらず、手軽に吸えることが受けたのです。
決定的だったのは機械化です。1881年、アメリカのジェームズ・ボンサックが紙巻きたばこの製造機で特許を取りました。
図解:1日に作れる本数(1本の棒 = 3,000本)
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熟練工の手巻き … 約3,000本
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ボンサックの製造機(1台) … 約120,000本(手巻きの約40倍)
アメリカのジェームズ・デュークはこの機械をいち早く導入し、1890年に巨大企業アメリカン・タバコ社を築きます。安く大量に作れるようになった紙巻きたばこは、世界大戦のころには兵士の必需品となり、20世紀を通じてたばこの主流になりました。1950年代半ばからは、フィルター付きの紙巻きが急速に増えていきます。
日本の紙巻きたばこ ― 広告合戦から専売制へ
日本でも明治時代に紙巻きたばこが広まりました。「天狗たばこ」の岩谷松平と、「サンライス」「ヒーロー」の村井吉兵衛が派手な広告合戦を繰り広げたことはよく知られています。
しかし1898年に葉たばこが、1904年(明治37年)には製造も含めて国の専売になりました。日露戦争の戦費をまかなうことに加え、外国資本に市場を押さえられることへの警戒もあったとされます。この専売制は80年あまり続き、1985年に日本専売公社が民営化されて日本たばこ産業(JT)が生まれました。
健康への関心と規制の広がり
20世紀の後半になると、喫煙と健康の関係が広く議論されるようになります。1964年にはアメリカで公衆衛生総監による報告書が公表され、各国で表示や広告の規制が進みました。
国際的には、WHOの「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が2003年に採択され、2005年に発効しています(日本は2004年に締結)。国内では、2020年4月に改正健康増進法が全面施行され、多くの人が集まる施設では原則として屋内禁煙になりました。
「どこで吸えるか」「周りにどう配慮するか」が、これまで以上に問われるようになったこと。これが、次に紹介する「燃やさない」製品が広まった背景のひとつです。
VAPE(電子たばこ) ― たばこ葉を使わず、液体を温める
「燃やさない」製品のうち、先に世界へ広まったのがVAPE(ベイプ)です。たばこ葉を使わず、リキッド(液体)をコイルで温めて蒸気にする製品で、電子たばことも呼ばれます。
原型となるアイデアは早く、1963年にアメリカのハーバート・A・ギルバートが「煙の出ない、たばこを使わないシガレット」の特許を出願しています(1965年に取得、商品化はされませんでした)。現在のVAPEにつながる製品を生んだのは、中国の薬剤師韓力(ハン・リー)です。2003年に特許を出願し、2004年に中国で発売。2006〜2007年ごろにはヨーロッパやアメリカにも広がりました。
VAPEはその後の20年ほどで、形を何度も変えています。世代の分け方に公式な定義はありませんが、一般には次のように整理されます。
図解:VAPEの形の移り変わり
- 2000年代後半たばこ型紙巻きそっくりの細い棒状
- 2010年前後ペン型液体を自分で補充するタンク式
- 2010年代前半大型(MOD)出力を調整できる箱型の本体
- 2015年ごろ〜POD型液体入りのPODを挿し替えるだけ
- 2020年ごろ〜使い切り型充電や補充をせず、使い切る
流れを見ると、大きく・多機能になった時期を経て、小さく・手間のかからない方向へ戻ってきたことがわかります。2015年ごろからは、少ない吸い込みでも喉への刺激が穏やかな「ニコチンソルト」を使ったPOD型が広まり、2020年ごろからは使い切り型が世界的に増えました。
なお、日本ではニコチンを含むリキッドは医薬品に相当する扱いとされ、国内で販売することはできません。国内の店頭で見かけるVAPEはニコチンを含まない製品です。ニコチン入りのVAPE(いわゆるニコパフ)については、ニコパフとは何かの記事と、日本のルールを整理した記事で詳しく書いています。
加熱式たばこ ― たばこ葉を燃やさずに温める
VAPEに続いて広まったのが加熱式たばこです。VAPEが液体を温めるのに対し、加熱式たばこはたばこ葉そのものを燃やさずに温め、出てきた蒸気を吸います。火を使わないため、灰が出ない点はVAPEと同じです。
広まったのはVAPEより後ですが、発想そのものはVAPEより古いのが面白いところです。1988年にはアメリカで燃やさないたばこ「Premier」がテスト販売されています。ただし評判がふるわず、翌1989年には撤退しました。1998年には電気で温める「Accord」も登場しましたが、こちらも広く定着するには至りませんでした。
流れを変えたのは日本です。2014年11月、「IQOS(アイコス)」が名古屋とイタリア・ミラノで販売を始め、日本では2016年4月に全国発売されました。同じ2016年には「Ploom TECH(プルーム・テック)」が福岡で、「glo(グロー)」が仙台で発売され、日本は加熱式たばこが最も早く広まった国のひとつになりました。
図解:「燃やす」と「温める」の温度の違い(目安)
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紙巻きたばこ(燃やす)燃えている部分は約600〜900℃
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加熱式たばこ(たばこ葉を温める)最高で約350℃(製品による)
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VAPE(液体を温める)おおむね200〜300℃前後
温度は研究や公的機関の資料でよく示される目安で、製品・出力・吸い方によって変わります。仕組みの違いを示す図であり、健康への影響の大小を示すものではありません。
比べてわかる、何が変わってきたのか
ここまでの5つを並べてみます。
| パイプ | キセル | 紙巻きたばこ | VAPE | 加熱式たばこ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 広まった時期 | 16世紀〜(ヨーロッパ) | 17世紀〜(日本) | 19世紀後半〜 | 2000年代後半〜 | 2010年代〜 |
| 使うもの | 刻んだたばこ葉 | 髪の毛ほどに細く刻んだ葉 | 紙で巻いたたばこ葉 | リキッド(液体) | たばこ葉を使ったスティックなど |
| 火 | 使う | 使う | 使う | 使わない(電気で温める) | 使わない(電気で温める) |
| 吸うもの | 煙 | 煙 | 煙 | 蒸気 | 蒸気 |
| 灰 | 出る | 出る | 出る | 出ない | 出ない |
| 1回の手間 | 葉を詰めて火をつける | ひとつまみずつ詰め直す | 火をつけるだけ | そのまま吸う | スティックを挿して温める |
表を横に読むと、変化の方向ははっきりしています。
図解:昔と今で変わったこと
- 火火をつけて燃やす電気で温める
- 中身たばこ葉液体(VAPE)
- 吸うもの煙蒸気
- 灰出る出ない
- 手間詰める・火をつける挿す・吸うだけ
道具に葉を詰める手間は、紙巻きたばこで「1本」という単位になって消えました。そして火と灰は、VAPEと加熱式たばこで「温める」仕組みに置き換わりました。たばこの歴史は、「より手軽に」「周りを気にせずに」を求めて形を変えてきた歴史とも言えます。
まとめ
- たばこはアメリカ大陸の植物で、数千年前から使われていた。1492年を境に世界へ広がる
- ヨーロッパではパイプと嗅ぎたばこ、日本では江戸時代にキセルの文化が育った
- 1881年の製造機の特許で紙巻きたばこが大量に作られ、20世紀の主流になった
- 日本では1904年から専売制となり、1985年の民営化でJTが生まれた
- 21世紀は「燃やさない」時代へ。液体を温めるVAPEが2000年代に、たばこ葉を温める加熱式たばこが2010年代に広まった
- 加熱式たばこの原型(1988年)はVAPEより古いが、広く定着したのは2014年以降
記事中の年代や数値は、公的機関・百科事典・研究論文などで一般に示されている内容をもとにしていますが、起源や伝来の時期などには諸説があります。
VAPEの仕組みや種類をもっと詳しく知りたい方は、ニコパフとは何かの記事や、選び方の記事もどうぞ。
